LGBT+は殺されても笑ってろ

LGBT+の人権問題には、軽いものと重いものがある。
制服・トイレ・結婚の問題みたいに、比較的表面に見えていて、解決方法がありそうなもの。
自殺率の高さや精神疾患、貧孤率の高さといった、もっと深刻で重いもの。

この両者を一緒くたに語ることはできないだろう。

残念ながら、現代日本社会にセクマイとして生まれたら、心の健康を保つことは難しい。
毎日自尊心を傷つけられて、精神的に追い詰められる。
その心の傷は決して浅くない。
人によっては、いじめ、虐待、犯罪被害、災害被害と同じぐらい深刻なトラウマになっていたりする。
実際、セクシャリティを苦にして死んでしまいたいと思ったことがある当事者は多い。

もちろん、社会の取り組みは10年前に比べたらかなり進んだ。

LGBTという言葉の認知度が上がって、制服・トイレ・結婚の問題について人々が関心を持つようになった。そのこと自体は喜ばしいことだと思っている。

でも、そこで終わっちゃいけない。
まだまだ根深い問題があるということ。
セクシャルマイノリティと言うだけで、社会から追いやられて、その結果命を落としてしまう人がたくさんいるということを、忘れてはいけない。

LGBT+は自殺率が高いし、精神疾患や貧困も多い。
社会に受け入れてもらえずに身を隠すように生きてるせいで、ウツ、対人恐怖症、不安障害、薬物依存、借金、ホームレスなどの問題に陥って抜け出せなくなるのが典型的なパターンだ。
LGBT+でこういう問題を抱えている人が、あまりにも多すぎる。
わたし自身も、セクシャリティのことで死んでしまいたいと思ったことがあるし、実際に何人かの友達を亡くした。
そしてこれからも大切な友達を唐突に亡くしたりするだろう。
ただセクシャルマイノリティだというだけで。

LGBT+の人権活動はまだまだ始まったばかりだ、分かってる。
10年前に比べたらすごい前進だ、それも分かってる。

「市がこんなパンフレットを作ってくれるなんてすごいね」
「アライって言葉を知ってくれてるの、うれしい」
「アセクシャルをドラマで取り上げてもらえるようになっただけでもすごい」
「驚くべき前進だよ」
「10年前に比べたら考えられないぐらい素晴らしい時代になったよ」

素直にそう思う一方で、どこかモヤモヤする。
そんな軽い問題じゃないって。
命に関わる問題なんだって。

「LGBT当事者はどんなことに困ってるのでしょうか」
どんなことって…。
そもそも死んでしまいたくなるような気持ちで毎日を過ごしてるのに、何言ってるの?
大事なお友達を社会に殺されたって思ってるよ。
LGBT+は殺されても笑ってろとでも言うの?

「アライになりたい」
そうなんだ、よかったね。
まるで観光気分だね。
異文化交流をして楽しんでるんだね、よかったね。
わたしはセクシャリティのことで死にたい気持ちになったこともいっぱいあったけど、そんな軽いノリなんだね。
自殺しようとしてる人に向かってそんなこと気軽に言えるの?

「アセクシャルについてコメディとして取り上げました」
コメディ…?
アセクシャルであることで絶望して死にそうな気持の人だっているのにコメディ…?
いじめや災害でコメディ作ったりしないのに、なんでアセクシャルはコメディにしていいの?
当事者の心の傷はそんな軽いものじゃないんじゃないの?

そんな思いがあふれて止まらない時があるのも確かだ。
人前では前向きなフリをして見せるけど、やりきれない時がある。
深刻さが伝わらないことに一人絶望する。

この苦しみと絶望に誰かがそっと寄り添ってくれたら、きっとそれだけでもいいのにね。

「そこまで深刻なことだなんて知らなかったよ」
「そんなにツラかったんだね」

せめて誰かがそう言ってくれたら、それでいいのに。

今日もわたしはわたしの傷をそっと慰める。

ABOUTこの記事をかいた人

パンセクシャルでポリアモリーでADHD虹 当事者カウンセラーとしてオンラインカウンセリングやYouTube配信など各メディアで積極的に活動中。